≪レディ・ツインクル!≫  ■back 
   □何行か毎の空白行は、読みやすさのためで、他意はありません。

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「追え、追うんだ。あのガキどもめ、あれ一機いくらすると思っているんだ。」
 キャリングスは、こぶしを振り回しながらわめいたが、警官たちの多くは遠ざかっていくヘリコプタを呆然と見送るだけだ。地団駄を踏むキャリングスの手の中で、携帯端末の報知器が震えて着信を告げた。相手はシャンデだ。
「状況は監視モニタで見ていました。市内全署のヘリコプタの半数を、最優先で追跡に回しました。よろしゅうございましたか?」

「半数とは何だ?」
「小型宇宙ボートのほうも、確保に失敗しました。あろうことか、宇宙艇で大気圏内を逃走しています。もともとそちらの追跡に全ヘリコプタを当てていましたが、そのうち半分を急遽こちらへ回しました。」
「失敗しただと?一体何をやっているんだ。」

 そんなこと言ったって、と溜息をつきながら、それには答えず、
「警務局長がご使用だった、本庁のもう一機の最新型ヘリをそこへ回送させていますが、局長、追跡にお加わりになりますか?」
「この事態、警務局長にも聞こえているのか?」
 本庁ビル中大騒ぎなのに、連絡が行かないわけないじゃないの。そりゃあ、ライバルには聞かせたくない失態でしょうけど。
「はい。」

「私は執務室で指揮する。君が行きたまえ。」
 実質、私が傍にいなければ、状況判断に迷うくせに。
「どちらの追跡に加わりましょう?」
「君が考えたまえ。」
 ほらね。

「では、調査官を追います。」
「任せる。」
 屋上のヘリポートを映したモニタを見ると、ようやく信号弾の煙が晴れてきた。その中を、傲然と歩くキャリングスが見えた。


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