≪レディ・ツインクル!≫  ■back 
   □何行か毎の空白行は、読みやすさのためで、他意はありません。

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 ジェイナスの携帯端末をもって、部下が戻って来た。
「さあ、調査官。データの閲覧ができるよう、システムを起動していただけますかな。」
 キャリングスは、端末を、拘束されたままのジェイナスの右手に差し出そうとした。
「局長、待ってください。万が一自白剤が効いていないなら、内容を破壊されるかも知れません。」
「そうか。それなら薬を追加したまえ。いや、種類を変えるか。」

「まず、追加してみます。」
 シャンデは、拳銃に似た高圧注射器を、再びジェイナスの二の腕に当てて、引き金を引いた。ジェイナスは、びくんと体を震わせて、がっくりと頭を垂れた。キャリングスは慌てた。
「おいおい、ショック死させたんじゃないだろうな。」
 シャンデもややうろたえて、ジェイナスの脈を取った。脈動を感じる。顎を持ち上げ、目蓋を開くと、瞳孔はすっかり小さく閉じている。

「死んではいませんが。薬の量が多かったんでしょうか。」
「覚醒剤を使いたまえ。」
「あまり乱用すると、肝心なことを聞き出す前に脳が参ってしまいます。ちょっと時間をください。薬の組み合わせと量を調整します。」
「良かろう。必要な時間は?」
「夕刻には、いえ、夕刻前には何でも自白する状態にして見せます。仕上がったらご連絡差し上げます。」

「ランチも食べてなかったな。こんな状態では、長官に何と報告すれば良いかわからん。夕焼け雲を見る前に、良い結果を期待してるぞ。では、連絡を待っている。」
 キャリングスはさっさと出て行った。シャンデは溜息を一つついて、ジェイナスに向き直った。いきなり平手でジェイナスの頬を張った。反応はない。声も上げない。
「本当に気を失ってるように見えるわね。」

 顔を上げ、部下に命じる。
「私が戻るまで、交替で見張りなさい。必ず二人ずつ付くのよ。私は執務室で、薬量の計算をします。」
「了解しました。」
 三人の部下は、声をそろえて答えた。


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