≪レディ・ツインクル!≫  ■back 
   □何行か毎の空白行は、読みやすさのためで、他意はありません。

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「星間警察の本部って、ウォナス星系だったっけか。」
 レイはそう言いながら、コンピュータに検索させた。
「おっと、正しくは星間連合刑事警察機構だったな。ウォナス星系第四惑星イェライデュウ、ざっと二日の距離だな。」
「今すぐ出国申請すれば、夕方までには、カタパルトを使う順番が回って来るんじゃねいか?」
「よし、じゃあ出国の――」

 レイとフィーの会話を、イクミがさえぎった。
「待って!あたしは残る。行くのはレイたちに任せる。」
「何だって?」
「あたしはアーゴで待ってる。レイたちが助けを呼んでくるのを、ここでのんびり海に浸かって待ってる。」
 レイとフィーは、あっけに取られた。

「海に浸かってなんて言って、さてはおまえ、ジェイナスを助けるために、何かしようってんだろ。」
「おとなしくしてるもん。」
「嘘つけ!どうしてそんな、見え見えの嘘が言えるんだ、おまえは?」
「知らないもん。」
 レイもフィーも、頭を抱えた。イクミの強情は良く知っている。説得する自信はない。

「イクミ、本気なのね?」
 問うたエレーヌに、無言でうなずく。
「レイ、私とウォナスへ行きましょう。フィーはイクミとアーゴに残って頂戴。」
 エレ−ヌは席に着くと、端末を引っ張り出してさっさと出国申請の準備を始めた。レイとフィーは、またもあっけに取られた。

 結局女性二人に仕切られて、次の行動は決まった。レイとエレーヌは、出国審査に出かけた。タラップの前に立っていた警官が二人、また「護衛」に着いて行った。すると、タラップの前には、いつの間にかまた二人の警官が現れて、番人を始めた。どこか、別なところからも監視しているらしい。フィーは居残りのための荷物をまとめていた。イクミは――?フィーは、イクミが個室にこもったまま、妙に静かなのに気づいた。

「イクミ?」
 呼んでノックしても答えはない。不安になって、もっと大声で、もっと大きくノックした。
「イクミ!」
「うるさいなあ、開いてるよ。」
 ややほっとして、ドアを開ける。イクミのことだから、先走ってボートを抜け出してしまったのではないかと、内心どこかで疑っていたのだ。


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