≪レディ・ツインクル!≫  ■back 
   □何行か毎の空白行は、読みやすさのためで、他意はありません。

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 スピーカがざりざりと雑音を吐き出した後、いきなり会話の途中から始まった。
『・・・まり、アーゴというところは、・・・警察ぐるみでシンジケートの・・・お手伝いをしてるって・・・わけね。』
 ジェイナスの声だ。警察がシンジケートの手伝い?四人は顔を見合わせた。何ということだ。
『修辞学的表現ですな。』

『こんなの・・・修辞学に入る・・・ものですか。』
 ジェイナスは、なぜか苦しそうだ。相手はキャリングス局長らしい。
『アーゴは、リゾート以外これといって産業のない国だ。「常夏のショカヌフ」などと、名前だけは売り込んでいるが、実際、いつまでも観光だけではやっていけない。今どき常識の軌道エレベータすら、設計段階のまま頓挫している。』
『だからって、・・・まさか一星系の警察が、・・・丸々シンジケートの味方とは、・・・思いもよらなかったわ。・・・私もまだまだ・・・甘いわね。』

 四人とも、固唾を飲んで聞き入る。
『さて、そろそろ、私の方が質問させてもらおう。自白剤の効き目はいかがかな。』
『き・・・効いてきた・・・みたいよ。何だか・・・視界が暗くなって・・・きたわ。』
『このクスリが効いてきた証拠だな。部屋を暗くしたわけではないぞ。』
『あなたの・・・後ろの景色は・・・海の景色は・・・素晴らしかったのに・・・み・・・見えなくなって残念・・・だわ。』
『ここは最上階の65階だからな、眺めは最高だ。まったく残念だったな。』

『なぜ・・・地下の留置室じゃ・・・ないの?』
『いいかげんにしろ。質問するのは私だ。例の旅客宇宙船で、シンジケートの幹部の端末から、ダウンロードしたデータは、どこだね?』
 ゆっくりと、含めるように訊く。

『・・・ないわ。破棄した。』
『馬鹿を言うな。どこにやった。』
『すでに・・・本部に渡って・・・いるわ。』
『そんなはずはない!どっちも嘘だ―――ん?手に何を握っている?』

 がさごそと、もみ合う音。
『携帯端末の遠隔操作装置!どうやって見つからずに・・・』
 ぶつりと途切れた。
 しばらく誰も声をだせなかった。

 レイが、ごくりと音を立てて唾を飲み込んでからしゃべり出した。
「とんでもないことになったぜ。道理で監視もつくはずだ。―――着信日時は、今日の昼頃だ。畜生、四人で出かける直前じゃないか。今朝からボートのあちこちをいじってたのに、メッセージのチェックなんて考えもしなかったな。」
「ネットワークは、実質、星系ごとに閉じてっから、星系外から来た俺たちへ宛てたメッセージが来てようなんて、普通誰も思わねいさ。」
 フィーが慰めるように言う。

「それよか、監視つきたぁいっても、俺たちがこうやって自由にしてられてる方が、奇跡的だと思うぜ。」
「直接関係なさそうだから、できるだけ穏便に済まそうということじゃないかしら。知らずに帰ってくれれば、それに越したことはないと思ってるのよ、きっと。」 
「メッセージをもらってしまった以上、そうはいくか。」
「ええ。」
 フィーもエレーヌもうなずいた。


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