≪レディ・ツインクル!≫  ■back 
   □何行か毎の空白行は、読みやすさのためで、他意はありません。

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「とりあえず、星間警察の本部とやらに、手紙を書いておくよ。」
 レイはコクピットへ向かった。コクピットでコンピュータを呼び出したレイは、逆に、ボートのサーバにメッセージが着信していることを示すマークが点滅しているのを見た。

「みんな、コクピットへ来てくれ!」
 リビングユニットでくつろいでいたフィーたちが飛び上がるほどの音量で、インターカムがレイの怒鳴り声を響かせた。ばたばたとコクピットへ駆け込んだ三人は、メインディスプレイに拡大されたメッセージの本文テキストを見た。

≪ジェイナス・ツインクルです。このメッセージは、万が一の時のために、クリックひとつで送信できるよう準備したものです。何もなければ送信されることはありません。すなわち、救助を求める緊急メッセージです。真っ先に受信するのは、まだ近くにいるであろう、私がアーゴまで行くのを助けてくれた宇宙大学のルフトウィック君たちでしょう。

 もしこのメッセージを受信したら、あなた方は、自分たち自身で私を助けようとしてはいけません。できるだけ早く星間警察の本部へ直接連絡を取って(できれば出向いて)、調査第二局第二部のスズキ課長に、私が助けを求めていることを伝えてください。勝手なお願いですが、よろしく。経費はあとで埋め合わせします。(無事助かったらね。)では、このメッセージが送信されずに、無駄になることを祈って。≫

「どういうこと?」
 イクミがディスプレイを見つめたままつぶやいた。
「宇宙港へ到着すると、自動的にその星のネットワークに接続するから、メッセージくらい届くと思うけど。」
 レイの答えがとぼけた調子に聞こえるのは、実はレイ自身が少し混乱しているからだが、
「そうじゃなくて。内容の意味を訊いてるのよ。」
イクミを怒らせたらしい。

「<アーゴまで行くのを>って書いてるだろ?これ、アーゴまで来る途中で、このボートに乗ってる間に書いて用意しておいたんだよ、きっと。端末を返してから、アーゴに着くまでの間だ。」
 またイクミへの答えになっていないが、これにエレーヌが、
「ジェイナスたちって、常にこういうものを用意しているんじゃないかしら。移動する先々で、先を見越して少しずつ内容を変えて。何かあったら、瞬時に送信できるようにして。あて先も、これではわからないけど、一度に複数に送るようになってるんだわ、きっと。」
などと言うものだから、イクミはかんしゃくを起こして床を踏み鳴らした。

「だから、一体何があったっていうのか訊いているんじゃない!」
「これだけで、何があったかなんて、わかるもんか。何かあったから、これが送られて来たんだろ。」
「まあ落ち着けよ。まだ続きがある。音声ファイルがくっついてるんだ。再生するぞ。」


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