≪レディ・ツインクル!≫  ■back 
   □何行か毎の空白行は、読みやすさのためで、他意はありません。

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「わかりました。では、星間警察の本部の方に、手紙でも出してみます。お邪魔しました。」
 エレーヌがそう言って頭を下げ、レイの手からまだ不満そうなイクミの腕を受け取って、踵を返した。レイとフィーも、あわてて
「お手数かけました。」
「お邪魔しました。」
と頭を下げ、エレーヌに続いた。無論、お付きの警官たちも着いて来る。

「まずは昼飯にしようぜ。」
 フィーはことさら能天気に提案した。エレーヌも努めて明るく受ける。
「今朝のショッピングモールの中に、しゃれたお店があったのよ。ね、イクミ。」
「え、あ、ああ、うん。」
 イクミは、何やら調子が上がらない。気に入らないことがあったのに、いつものようにぶちまけられないから、と顔に書いてある。

「よし、そこ行ってみよう。エレーヌの見立てなら、間違いねい。」
「何よ、あたしの見立てなら間違いあり、って聞こえるわよ。」
「んなこと言ってねいだろ。」
 フィーの言葉には、瞬時にいつものイクミに戻って反応するあたりがおかしくて、レイとエレーヌは、思わず笑顔になった。

 午前中にエレーヌが目星をつけておいたというお店で、ランチを食べながら、ジェイナスの話題になった。
「黙って行っちゃうなんて、ひどい。」
「まあまあ、向こうは仕事なんだから。」
「乗船賃、取りはぐったなあ。」
「便乗させてあげただけだからな。」

「外装板や外殻をぶっ壊された分は、ちゃんと請求しなくっちゃダメよ。」
「そりゃそうだ。警察だったら、経費で落ちるのかな?」
 どうも核心に触れる話ができない。すぐ隣のテーブルで、お付きの警官たちが水を飲んでいるせいもある。一応義理で、一緒に食べようと誘ったのだが、思ったとおり、勤務中だから気にするな、必要があれば他の者と交替して食べるから、と言って水だけ注文したのだ。

 パスに仕込まれたマイクが聞いているかと思うと、「彼等、昼飯も食わないで、仕事熱心なもんだ」などという軽口もたたきにくい。やはりボートに戻らないと、次の行動を話し合うことはできないようだ。何の成果もなく悄然と宇宙港へ戻り、ボートに入ると、またパスを冷蔵庫へ放り込んだ。やっと自由に話せる。

「あーあ、ジェイナス、出発したことにされちゃった。」
 イクミはリビングのソファに体を投げ出して言った。
「本当にもう出発しちゃったのかな。」
「少々胡散臭くたって、本来俺たちには関係ねいんだ。このまま遊ぶだけ遊んで、大学へ帰っちまったって、かまわねいんだよなあ。」


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