≪レディ・ツインクル!≫  ■back 
   □何行か毎の空白行は、読みやすさのためで、他意はありません。

19

 残っていた警官に尋ねると、入国審査所まで案内してくれると言う。エアロックを施錠して、ぞろぞろと建物へ向かう。アサルトライフルで武装したサングラスの警官が二人、前後をはさむようにして案内してくれた。建物にはいると、さすがはリゾート惑星、リラックスした格好の人々が大勢、行き来していた。

 審査は簡単だった。特別に宇宙港内から街まで自由に行き来できるパスカードをくれて、エプロンに置いたままのボートに、寝泊りして良いとまで言ってくれた。
「何だか、気持ちワリいくらいの優遇だな。」
「せっかくのご厚意だからな。まあいいさ。」
 ボートへ戻るときも、警官の案内つきだった。

 ホテルを確保する必要がなくなったので、四人はさっそく水着に着替えて、公共ビーチで海水浴を楽しむことにした。何はなくても、ボートのコンピュータを公共ネットワークに接続したうえで、宇宙港に一番近い浜辺を検索する。それは、宇宙船の爆音から逃れるためか、万が一の事故の心配のせいか、宇宙港のある半島の丁度反対側にあった。高速モノレールでなら十分ほどの距離だ。やはり警官たちが案内を買って出てくれた。

 四人とも、水着にサマージャケットという出で立ちだが、さすがは海のリゾート地、モノレールの中でだって、周囲の誰も気にする様子もない。むしろ、似たような格好の客が、他に何人もいる。
 案内の警官たちは、宇宙港外ということらしくアサルトライフルこそ持っていないが、サングラスの中から油断なく四人と周囲に気を配っている。イヤホンとマイクが一体になったヘッドセットを着けているのは、それで常に本部などと連絡を取り合っているのだろう。

 アーゴの治安の良さには定評がある。宇宙的な有名リゾート地なのに、凶悪事件などめったに聞かない。警察がこんなに厳しく目を光らせているからかしら、と、エレーヌはぼんやり考えた。
 ビーチは、典型的な熱帯の海で、四人ともその美しさに十分満足した。

 ひととおり泳いで、ボートに戻る。行きと同じく、入国審査所の一番端の特別ゲートで、パスカードの端をレールスロットに通すと、腰までのドアがすんなり開いた。警官たちも同じようなパスを使って、同じゲートを通って来る。本来はそうした関係者のためのゲートらしい。他のゲートには、観光客とおぼしき人々が列をなしている。なんとなく優越感と後ろめたさ。

 アーゴの一日目は、そんなふうに暮れた。次の朝は、寝坊気味ながら、何となくみな同じ頃に起き出してきた。
「まずは、燃料を補給しておかなくちゃ。」
 朝食を前にしたイクミの言葉に、フィーは目を丸くして言った。
「おっと、イクミ。ずいぶん堅実なことを言うんだな。燃料なんざ、俺たちが心配するから大丈夫だぜ。」

「なあんて言ってるうちに、忘れたり、タイミングを逸したりするの。今のうちに機体の整備もやったんさい。」
「おいおい、イクミに言われるようなことじゃねいぞ。」
 また始まった。

「やめろってば、二人とも。確かにここまで、だいぶ無理させたからな。一通りチェックして、燃料も先に調達しよう。」
「さすがレイ、手堅いわあ。」
 レイとフィーはハンガーを借りてボートの整備、イクミとエレーヌは食料その他の買出しに、役割分担が決まった。
 イクミたちは、今度はタンクトップにミニスカートという扮装に着替え、パスをストラップで首からぶら下げて出かけた。道案内兼護衛という名目で、また警官が二人、着いて来た。


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