≪レディ・ツインクル!≫  ■back 
   □何行か毎の空白行は、読みやすさのためで、他意はありません。

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「つまり、奴らは軍のどこかにつながりがあって、僕らは間接的に軍を相手にしなきゃならないってことだろ?」
「レイ、今はいい。とにかく逃げる。また、今現在の振幅で跳べるだけ跳ぼう。データマトリクスを組み立ててくれ。」
「やってる!」

 追っ手にも見つかったようだ。徐々に近づいてくる。
「通常空間燃料が心もとない。最大加速でも逃げ切れねいと思う。ぎりぎりまで引きつけて、かわすだけにするから、Gがきついと思うが、勘弁してくれ。」
「いや、もうできた。行こう。今度はさっきのマトリクスを流用したからな。」
「よーし、上出来!」
 間髪いれずに、ハイパードライブに突入した。

 しかし、ジェイナスを乗せてから2度目のハイパードライブは、数秒で終わった。
「レイ、謀ったな。目いっぱいのドライブじゃなかったぞ。」
「時間稼ぎさ。いくらトレーサーがあったって、完璧に追いかけることなんかできるわけがない。さっきは2時間以上通常空間にいたから、それなりに振幅が大きくなっていて、だいぶ先まで跳んだだろうって先入観で、追い越して行ってしまうことを祈るさ。」

「ああ、うん。良しとしよう。いくら遠くまで跳んだって、追いつかれたら同じことだもんな。」
「あなたたちって...。」
 ジェイナスは呆れ顔で言った。
「何だかこういうことに慣れているみたいね。」

「フィーとレイは、学内の二人乗り軽ボートのレースで、ここ2回、連続優勝してるのよ。」
 自分のことではないくせに、イクミが得意げに言った。
「砲撃をかわすのだって、シミュレーションレースで、フィーにかなうものはいないの。」
「お、おい、イクミ。」

 普段は優勝のトロフィーを見せても、お祝いの言葉のほかに、必ず何か皮肉を付け加えるようなイクミなのに、今日の彼女はどうしたというんだ?驚いた顔のフィーを見て、イクミは顔を赤くして立ち上がった。
「キ、キッチンユニットを片付けて来るわ。まだすっかり掃除してなかったもの。」
 唖然と見送るフィーに、他の三人は、思わず微笑んだ。

「イクミ、キッチンが片付いたら、食事の準備を頼むよ。」
 イクミの背中に、レイが声をかける。
「私も手伝って来るわね。」
 エレーヌも席を立った。


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