≪レディ・ツインクル!≫  ■back 
   □何行か毎の空白行は、読みやすさのためで、他意はありません。

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 少女たちにメダルの表を掲げて見せる。
「これ、星間連合の紋章、知ってるわよね。」
「紋章はわかるけど。」
 裏を返して、小さな指紋パッドに右手の親指を当てた格好で、その上の網膜スキャナのレンズを覗き込む。するとメダルが、低い女性の声でしゃべり出した。

『ジェイナス・ツインクルの右手親指の指紋と、右目の網膜紋様と認めます。ジェイナス・ツインクルは、銀河星間連合刑事警察機構、調査第二局第二部第二課の調査官であることを証明します。』
 そのあともごにょごにょと、日付などをしゃべっているが、黒髪の小柄な少女がそれをさえぎって、
「わかるけど、そのメダルが本物だって、誰がどうやって証明するの?」

「そうなのよね。」
 ジェイナスは溜息交じりに答えた。
「要するに、実際に当局へ戻るまで、本当に証明することはできないわ。だから、あまり詳しいことは聞かないでおいて、近くの星系まで送って頂戴。そこの警察機関と連絡が取れれば、そっちに協力してもらえるから。少ないけど、乗船賃くらいは支払うわ。お願い。いえ、お願いします。」

 少女たちは顔を見合わせた。
「星間警察だからって、こんな好き勝手やっていいもんなの?」
「だから、ごめんなさい。謝るわ。あなたたち、航路からいって、目的地はプーマック星系でしょ?」
「ええ。アーゴです。」
「プーマックの中央警察庁は、アーゴ星のショカヌフ国際宇宙港のすぐ近くだわ。ショカヌフまでご一緒させていただけるかしら。」

「わかりましたよ。確かに、アーゴに降りるのは、ショカヌフ宙港の予定です。連れて行くのがいやだと言っても、ここで外へ放り出すわけにも行かないし、僕はしょうがないと思いますが。」
「私も一応、しょうがないという方に一票。」
「あたしが反対するとでも?」

「もう一人いるけど、賛成過半数だ。取りあえずこのままアーゴへ向かうということで決まりだな。正直言って、ようこそとは言いにくいけど、ようこそ、ミズ・ツインクル。前にも言いましたが、僕は一応この船のオーナーで船長、レイ・ルフトウィック。ドルフムトワ宇宙大学工学部の総合宇宙船工学専攻科に在籍していまです。」
 レイは右手を差し出した。ジェイナスはその手を握って、
「ありがとう、キャプテン・ルフトウィック。このご恩は、きっと何かの形で報いるわ。」

「と言っていただいたところで、申し訳ないんですが、拳銃と携帯端末は、しばらく預かっておきます。悪く思わないでくださいね。」
「ええ。」
 続いて少女たちも名乗って、握手した。


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