≪レディ・ツインクル!≫  ■back 
   □何行か毎の空白行は、読みやすさのためで、他意はありません。

13

 ジェイナス・ツインクルは、見慣れない部屋のベッドに横になった格好で、目を覚ました。
「気が付きましたね。具合はいかがですか?」
 金髪の少女の問いかけにも、一瞬、頭がぼうっとしていたが、はっと気づいて上体を起こすと、右手を腰へ飛ばした。しかし、拳銃も、携帯端末も、そこにはなかった。考えてみると、いつの間にか、船外服が脱がされているのだ。船内服も、前がはだけ、ウェストベルトが緩められている。

「全身、とてもお疲れでしたね。ご同意をいただかずに申し訳ありませんでしたが、薬物を使わせていただきました。思ったほど効果がなかったようですが、多分いくらかは、ご気分が回復なさってらっしゃると思います。」
 少女の言葉は、あくまで優しい。クスリは効きっこないが、確かに体の調子はだいぶ回復している。すっかり寝てしまったのは不覚だったけれども、それだけ体がまいっていたのだろう。

「お姉さん、いったい何があって、あんな物騒なお客連れて、あたしたちのボートにやって来たの?」
 部屋の奥から、黒髪の少女が遠慮のない口調で近づいてきた。手にしたトレイに、何やら載せてある。
「ぬるいけど、コーヒー。こっちはスープ。特別にご馳走したげるわ。」
「ありがとう。まずコーヒーをいただくわ。」

 ジェイナスは、上着の前を合わせ、ストローが突き出したパックを手に取った。そこへノックの音が聞こえ、金髪の少女がどうぞと答えると、焦げ茶色の髪の少年が入って来た。確か、船長と名乗った方だ。
「おはようございます、レイディ。いかがお目覚めですかな?」
 皮肉たっぷりだ。

「おはよう、ミスター。どうやら本当に助けてもらったようね。」
「一船托生と言ったでしょう。自分たちが助かるよう努力しただけですよ。次は、あなたからも助かりたいと思っているんですがね。武装して乱入してきたハイジャッカーからね。」

「ごめんなさい。私としたことが、だいぶ動転していたのね。奴らはどうしたの?あれからどのくらい経ったの?」
「奴らは、半端なハイパードライブで撒きました。そのドライブから2時間ほど経っています。それより、こっちから聞きたいことが山ほどあるんですがね。」

「そりゃそうね。まずは助けてもらったことにお礼を言うわ。どうもありがとう。私はジェイナス・ツインクル。銀河星間連合刑事警察機構の調査官です。」
 さすがに、少女たちに驚きの表情が広がった。ジェイナスは、上着の前を開き、襟ぐりから下着の中へ手を突っ込むと、銀色のメダルを引っ張り出した。


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