≪レディ・ツインクル!≫  ■back 
   □何行か毎の空白行は、読みやすさのためで、他意はありません。

07

「三十秒で追い抜かれる。このままなら、衝突は避けられそうだ。」
 それでもフィーの声には、緊張が混じる。メインディスプレイの光点は六つ、脇に表示される相対距離の数字が目まぐるしく減っていく。

 インターカムで、イクミとエレーヌも、コクピットに呼んだ。エレーヌだけ先に来た。
「シートに着いて、ベルトをしてくれ。イクミは?」
「すぐ来るわ。いったい何があったの?」
 体をシートに固定させながら、エレーヌが訊くが、答えはない。すでに接近物体が近すぎて、二人とも計器類のチェックに忙しい。

「来るぞ。」
 レイは無言でうなずき、ディスプレイに見入る。
 と、突然、先頭のシャトルが停止した。ように見えた。それほど急な減速だった。
「うわっ。」
 思わず声が上がる。そのシャトルは、みるみるルートを変え、急接近して来たのだ。近すぎて表示しきれず、ディスプレイが真っ白になった。その途端、衝撃が来た。後部座席のエレーヌが悲鳴を上げる。コクピットの昼光色照明が一旦消え、すぐに非常用のオレンジに切り替わった。コンソールのインジケータのいくつかがブラックダウンし、その倍くらいがグリーンからレッドに変わった。

 しかし、それっきりで、爆発も何も伝わって来ない。
「衝突と言うよりは、接触して引っ掛かった、てな感じだ。」
 レイが、つぶやく。引っ掛かった質量が、横Gとして感じられる。
気を取り直して、フィーが損傷のチェックを始めた。大したことはなさそうだ───と思った途端、エアロックの警報が鳴り響いた。

「何だって言うんだ!」
「緊急開閉装置で、外からエアロックを開けた奴がいる。」
「フィー、機体のチェック頼むぜ。僕はエアロックへ行って見てくる。」
「いや、一人じゃ危ねい。俺も行く。エレーヌ、ここを頼む。」
「わかったわ。気をつけてね。」


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