≪器楽部第二器楽班≫  ■back 
  □数行毎の空白行は、読みやすさのためで、他意はありません。

15 活動予定

「主な活動は、七月の夏休み前の発表会、九月の学園祭ステージ、十二月のクリスマスチャリティライブ、ってとこね」
そういえば、具体的な活動って、あまり考えてなかった。
「七月の発表会は、合同ライブって呼んでるけど、音楽部と器楽部の校内ジョイントコンサートね。
 午後半日もらって、大講堂で全校生徒を前に演奏するの。第二器楽班は前座みたいな感じ。
 あなた方もそこでデビューしてもらうから、それまでに最低二曲、用意してね」

「え?七月ですか?二曲?」
多佳子は思わず訊き返した。
三ヶ月しかない。
「とりあえずデビューだからね。何なら三曲でもいいわよ」
「いえいえいえ、あたしたち、まだなんにも、相談すらしてないですし」

「うん、だから最低二曲を目標にしてね。
 コピーでもオリジナルでも良いから。できればあんまりお下品なのは避けて欲しいけど」
ウィンク。
「会場は、七月の合同ライブは大講堂、九月の学園祭は音楽部が根城にしてる小講堂で、この二つは校内だけど、十二月のクリスマスチャリティは市民会館の中ホールで、一般のお客相手にお金取ってやるの。
 覚悟しといてね」

そんな先の話まで言われても、ぴんと来ない。
まずは七月を何とかしなくては。
「それにしても、今日のデモ、結構上手くいったと思うんだけど、もう一人くらい新入部員が来てくれないものかしらね」
加賀谷さんと一緒に、準備室の隅でアンプを探した。

手前には、今の二、三年生が使っているアンプやドラムセットが並んでいる。
その奥に、鉄琴か木琴が何台か押し込んであるけど、カバーがかかっていて、どれが鉄琴でどれが木琴かわからない。
それらをどかすと、去年の三年生が使っていたアンプが、四台見つかった。
うち一台はベースアンプで、文乃は安心したようだ。

他にも、ドラムセットが一式、使われずに埃をかぶっている。
だいぶ遅い時間になってしまって、加賀谷さんは先に帰ったけど、アンプを引っ張り出して、三人で音を出してみた。
文乃のベースは、国産のオリジナルデザインで、外国メーカーのコピーではないそうだ。
こげ茶色のグラデーションが渋い。

「昨日の〈ほろほろ…〉だけど」
楽器を構えたまま、多佳子は遠慮気味に切り出した。
「二番以降を考えてみたの」
「え?一晩で?」
驚く季依に、レポート用紙に書いた歌詞を渡す。

父親の複合プリンタでコピーを取ったので、文乃にも歌詞と楽譜を渡した。
「あたし、いい曲だと思うんだ。七月のライブ、一曲はこれ、やらない?」
多佳子が提案すると、文乃が、
「苫米地さん、一度歌って聴かせて」

リクエストに応えて、エレキギターを伴奏に季依が歌い出す。
多佳子も覚えたてのコードで伴奏に加わった。
文乃は楽譜を見ながら小さく首を振ってリズムを取る。
季依は、多佳子が書いた二番以降も続けて歌った。

「多佳ちゃん、良いよ。才能あるんじゃない」
「良いと思う。一曲は決まりだね」
文乃が賛成して、
「じゃあ、もう少し聴かせられるようにアレンジしなきゃ」
季依は嬉しそうに笑った。


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